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欧米に比べ危機の直接的な影響が少なかった日本だが、規制改革で主導権を握れず巻き返しは難しい。
中国の銀行が台頭し始めており、生き残る米国勢と覇を競う構図が浮かび上がってくる。
覇権の変遷 邦銀、米銀そして中国へ1980年代の国際金融界で力を持っていたのは、邦銀だった。
銀行の実力を示す株式時価総額の上位には、日本興業銀行や住友銀行など大手邦銀が名を連ねていた。
国際市場での融資残高で見ると、邦銀が全体の3割を超え、邦銀は覇権をねらえる立場にあった。
邦銀の力の源泉は、小さな信用組合に至るまで潰さない徹底した保護行政で、最大手の都市銀行などには膨大な超過利潤が生まれた。
こうした背景の中、経済のグローバル化の流れに乗って、国際業務を急拡大させた。
覇権を握れなかったのには2つの要因がある。
ひとつは通貨戦略の失敗だ。
大蔵省は輸出企業の要請を受けて円高阻止に没頭し、統一通貨をめざした欧州のような長期的な通貨戦略を怠った。
それどころか直接影響の及ばない市場の拡大を警戒し、オフシヨア市場の育成などに本格的に取り組まなかったため、邦銀が強いうちにその力を生かした円の地位向上の機を逸した。
もうひとつは自己資本比率規制(パーゼルI)だ。
邦銀の急拡大を警戒する欧米が導入を主導し、邦銀は資本性の低い株式の含み益を自己資本に組み込むミスを犯した。
株式持合いという特殊な経済構造に立脚した邦銀の力は、株価の下落と共に衰え、邦銀は欧米に抜かれ「周囲遅れ」になった。
パーゼルIで金融機関は、自己資本負担のかかる融資からデリパテイプなど負担のかからない業務にカジを切る。
金融商品開発力とデリパティプを駆使したトレーデイングの力、それらを生かした株式、債券の引き受け力などが金融機関の力の源泉になった。
リードしたのはG・S、M・Sに代表される米投資銀行だった。
デリパティブなどで高い収益を上げる一方、その顧客基盤を生かして欧州の民営化案件などで次々に主幹事をさらい、パーゼルI体制の金融界で覇権を担った。
ただ、投資銀行は高いレパレッジをかけたビジネスで高収益を誇ったが、バランスシートに融資資産を抱えたりはしないため、株式時価総額はそれほど大きくはなかった。
株式時価総額で邦銀のあとを襲ったのは米銀だった。
初年代の停滞から抜け出した米銀は、規模拡大路線を突き進む。
銀行と証券会社の業務を分ける規制と、州を越えての業務規制が緩和されたのを機に、規模が生き残りのカギと考えて、業際、州際を越えた合併による巨大化が進んだ。
KはCM、JPMを飲み込んでいった。
地銀の雄であるNはB・O・Aを統合。
P・Tは投資銀A・Bを買収したが、その後、ドイツ銀行に吸収される。
業際では保険のTがCを買収し、新生Cグループが時価総額トップに君臨した。
2000年代になると、欧州金融機関の躍進が始まる。
通貨統合が実施され、欧州全域をにらんだ規模の拡大に狂奔した。
国際市場での融資は、ドイツ、フランス、スイスの金融機関が日本を抜いていった。
MフイナンシヤルグループやMUフィナンシヤル・グループは、誕生決定時には総資産で世界最大級を展望していたが、気が付くとR・O・SやUBSなどがそれをはるかに超えていた。
株式時価総額では、HS銀行とM銀行が統合してできたHSBCがシティに追った。
BRIcs経済の拡大が、旧英領などに深く入り込んだHSBCの株価を押し上げた。
BRIcsブームは、その一角である中国の株価を押し上げた。
その結果、中国の大手銀行である中国工商銀行がHSBCなどを追い抜き銀行ではトップに踊り出た。
中国銀行、中国建設銀行なども上位に名を連ね、株式時価総額で見ると、中国勢は国際金融界の覇権をうかがっていた邦銀のような存在になっている。
今回の金融危機は、こうした覇権の行方にどういう影響を与えるのだろう。
まず危機の影響で、覇権を競っていた有力金融機関の一部が脱落した。
ウォール街の有力投資銀行はパルジブラケットと呼ばれ、そこにはG・S、M・Sのほか、M、R・B、B・Sなどが名を連ねていた。
残ったのはGとM・Sだけで、収益力ではGが抜け出している。
米国の銀行ではCグループがサブプライムローン関連で大きな損失を被り、公的管理に置かれた。
また、Cグループの株式は平均から外れ、Mを買収したB・O・Aも厳しい。
米国は、2009年5月に金融機関の健全性審査(ストレステスト)を実施し、追加資本が必要とされなかったのはG・S、JPMなどで、M・S、B・O・Aなどは追加資本が必要とされた。
米国の金融界の勢力図はG・SとJPM・Cの2強の時代に突入したといわれているが、それは同時に国際舞台で覇を競う米国勢が2社しか残っていないことをも意味している。
欧州で覇権争いから脱落したのはスイスのUBSだ。
富裕層業務と投資銀行業務を柱とするユニークな展開で有力金融機関の地位を占めていたが、サブプライムローン関連で政府から資本注入を受けざるを得なくなった。
スイス政府が投資銀行業務の縮小を求めており、ビジネスモデルをより富裕層業務特化型に修正し、出直すことになる。
資産規模では、世界最大に踊り出たR・O・Sも国有化され、覇権争いから実質的に脱落した。
デリパティブ業務の拡大やABNA銀行の買収などが裏目に出た格好となった。
米国よりも激しかった英国の住宅バブルの崩壊も効いており、公的資金の投入を受けなかったBやHSBCも英国内業務は厳しい。
次に危機を受けた金融規制見直しが、勢力図をさらに塗り替えることになる。
方向性は投資銀行業務の収益性の低下と、商業銀行業務の再評価である。
投資銀行業務について9月、米JPM・Sが金融規制改革の主要8社への影響をリポートにまとめた。
それによると、ROEは証券化などへの資本負担の強化などで2・7ポイント、OTCデリパティブへの透明性強化措置で0・8ポイント、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の集中決済で0・8ポイント、商品取引へのポジション規制で0・5ポイント押し下げられ、2011年で平均となると分析している。
かつて有力金融機関がこぞってめざしたROEで、実現が極めて難しくなる。
金融機関別の規制見直しによる収益へのインパクトは、ドイツ銀行で最も大きく、ROEは6・7%まで低下する。
ゴールドマン・サックスへの影響も大きくROEは下がるが、それでも8社の中では最も高い。
商業銀行の評価が高いのは、サブプライムローン関連の影響による債券業務の落ち込みを、伝統的な貸し出し業務で補うことが予想されるからだ。
高収益ビジネスの陰に隠れ、それほど目立たなかった富裕層ビジネスなども安定収益源として認識される見込みだ。
JPは、危機の影響が大きい英国、アイルランド、ドイツを除く国の商業銀行業務に力を入れる銀行、大手ではC・SやS・Jを有望視している。
2メガバンクの時代 Mの苦境日本は、金融危機の直接の影響は一部を除き軽いとされてきた。
ただ主要国の中央銀行や金融監督当局が自己資本比率の強化で合意し、G・Sはリポートで「導入されれば影響は日本の銀行に対して最も大きい」と指摘している。
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